よくあるご相談

労働条件

労働条件に関する労務トラブルをご紹介します。
※労:労働者  使:使用者

始業より1時間も早く出勤している従業員に、「早く来て仕事をしているので残業代をくれ」と言われた(使)

その早出出勤が本当に仕事をするためなのか確認します。ただ単に早く来ているだけ(道がすいているから等の理由)ならば残業時間には当たりません。会社は従業員に始業時間からが労働時間だということを理解させ、不要な早出出勤なら辞めるように指導すべきです。

業務に必要な研修への参加時間は労働時間となるか(使)

研修、講座、委員会、自主活動等、会社で参加を強制するものは、労働時間にあたりますので、就業時間外に行われたものであれば時間外労働となり、割増賃金の支払い義務が生じます。 逆に、強制参加なのに従業員から参加したくないと言われた場合は、自由参加ではなく「労働時間」であることを理解させることが必要になります。正当な理由のない参加拒否は認めないことを、就業規則の服務規定に入れておきましょう。

試用期間が終わる日に「今日で終わり」と言われ、解雇された(労)

この会社の社長さんは、「試用期間は試しに雇用する期間だろう。期間が終われば終わりになることもある」とおっしゃっていました。確かにおっしゃるとおり、試用期間は「試しに雇用する期間」ですが、試用期間終了後に自動的に雇用関係が終了するものではなく、「誰が見ても納得できる、それなりの理由」が無いと解雇はできません。

上司の言うことを聞かず、勤務態度が悪いので解雇したら「不当解雇だ」と言われた(使)

この従業員の方は、何度注意しても遅刻が多く、挨拶や返事もろくにせず、周りの従業員に悪影響を与えかねないということで解雇したそうです。ただ、注意は口頭のみ、指導書等の記録もとっていませんでした。解雇は「誰が見ても納得できる、それなりの理由」がないと難しいですので、ある程度の期間、従業員を観察し、記録することが大事になります。服務規定に違反することが繰り返され、何度注意しても改善が見られないときは、十分に指導・教育をし、それでもダメなら解雇となります。

職種が限定された社員を、その職種が無くなるため解雇したら「不当解雇だ」と言われた(使)

この会社は、親会社からの命令で、その従業員の方がしていた職種を無くすことになったそうです。その従業員の方は、その職種を特定して採用していましたので他に配置転換もできず、やむなく解雇しました。職種を限定しているので、その職種が無くなれば解雇は当然と思われがちですが、それでも解雇を回避する努力は必要になります。他の職種に変更して雇用を続けられないか従業員とよく話しあって、お互いに納得できる道を探って、それでもダメなら解雇となります。

懲戒処分

従業員が10人未満の会社で就業規則は作っていないが、懲戒解雇できるか(使)

労働基準法第89条には「制裁の定めをする場合には、その種類と程度を就業規則に定めておかなければならない」とあります。したがって、就業規則辞退が無い場合は、制裁の定めができないので、懲戒解雇もできなくなります。就業規則は会社のルールブックです。10人未満の会社でも作っておいた方が安心ですね。

メンタルヘルス

欠勤が増えてきた社員が、うつ病の診断書を持ってきた。どう対応すればよいか(使)

会社には従業員の健康配慮義務があるので、放っておくことはNGです。 本人の希望、診断書の医師の意見を参考にして、会社で対応を決めます。短時間勤務や休業をするのであれば、同じ職場の方たちの負担が増えることも含めて考えなくてはいけません。一番大事なことは「どのくらいの期間か、賃金や保険はどうなるのか」等、短時間勤務や休業に入る前にはっきりと決めておくことです。

セクハラ・パワハラ

結婚後、なかなか子どもに恵まれない女子社員に「子どもはまだ?」と聞いたら「セクハラ発言だ」と言われた(使)

これだけではセクハラとは言えないと思いますが、個人のプライバシーに関することでもあり、注意すべきです。一般に「職場において相手の意思に反して不快や不安な状態に追い込む性的な言動」をセクハラ(セクシャル・ハラスメント)と言いますが、同じ言動でも相手の捉え方は違います。この言葉はセクハラになるから言ってはいけない、というより、相手の立場に立って考える、思いやりのある職場にすることの方がずっと大事なことだと言えます。

賃金

残業代の代わりに毎月固定の営業手当が支払われているが、その手当より多くの残業代が発生しているはずだが?(労)

会社は従業員の労働時間を管理する義務がありますので、残業時間も把握しているはずです。まず、その残業時間分の賃金が、営業手当の金額で足りているかどうか確認し、足りないことが明らかであれば会社に請求できます。労使間で「営業手当は残業代の定額払」であることをしっかり確認し合い、給料明細等にもその旨を記載することが大切です。

1ヶ月無欠勤の場合に皆勤手当を支給しているが、従業員が有休休暇を取得した月は支給しなくてもよいか(使)

年次有給休暇を取得した日は「出勤したとみなす」とされていますので、有休をとった日を欠勤扱いにして、皆勤手当を支給しないことはできません。会社側の「欠勤せず、頑張ってくれた従業員に支給するものなのに、有休をとった従業員にも出すのか」と思う気持ちもわかります。最近の賃金制度では、皆勤・精勤手当ではなく、評価制度を使って頑張ってくれている従業員に一定の評価を与えるというものが多く見られます。

年2回賞与を出しているが、賞与の支払日前に退職する従業員には出さなくてもよいか(使)

賞与は、頑張って仕事をしてくれたことの「ご褒美」と、これからも頑張ってねという「激励」の両方の意味があります。就業規則で「賞与はその支給日に在籍している従業員に支給する」と決めてある場合は、支給日に在籍していない従業員に支給しないことは違法ではありません。ただし、定年退職された方で退職日を選べない方には、会社として一定の配慮をしてあげてもよいと思います。

退職金規程が無ければ退職金を支給しなくてもよいか(使)

就業規則に規定も無く、今まで実際に退職金を支給していないのであればよいですが、規定していなくても実際に何人かに一定の基準で支払っていれば、それが慣行であると見られてしまいます。その慣行により退職金支給ありの雇用契約だったと認められれば、規程は無くても支給せざるを得なくなります。こうしたトラブルを防ぐために、会社に合った就業規則を整備しておくべきです。

年々増加する労務トラブル

裁判事件:J事件

自動車メーカー向けシステム開発を行っていた被災労働者が、長時間労働となり体調を崩した。「抑うつ神経症」と認定されたため自宅療養し、約4ヶ月後に職場復帰したが、職場復帰後1ヶ月後に自殺した。
判決は3割の過失相殺が認められたが、賠償金額は7,940万円。

裁判事件:K事件

長時間勤務の結果、過労で脳に障害を負い、意識不明の寝たきり状態になった。
裁判として、過労と症状の因果関係を認め、「過酷な労働環境を漫然と放置した」と、会社側の安全配慮義務違反を認定し、将来の介護費用や未払い賃金など総額約1億9,400万円の支払いを命じた。